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2022.07.25

Newsletter_米国特許法101条特許適格性要件アップデート_July 2022

米国特許法 101 条特許適格性要件アップデート:American Axle 事件の上告受理申立て却下と USPTO による意見募集の結果の公表

 米国特許法 101 条の特許適格性要件については、そのルールが不明確で予測可能性を欠くとの見解があり、米国連邦最高裁判所(以下「最高裁」といいます。)での判例変更や米国議会での法改正を求める意見が継続的に挙がっている状況ですが、現時点では、改正の実現には至っていません。本稿では、本論点に関する直近の状況をアップデートいたします。

1.American Axle 事件の上告受理申立て却下

 この問題について、当事務所の 2022 年 6 月 10 日付 Client Alert では、American Axle 事件の最高裁への上告受理申立事件において、米国訟務長官が、2022 年 5 月 24 日付、最高裁が本件の上告を受理したうえで特許適格性要件のテストをレビューすることを推奨する旨の意見を提出したことをご報告させていただきました。
 この米国訟務長官の意見を踏まえ、最高裁が特許適格性の要件をめぐるテストをレビューすることが期待されました。しかし、今般、2022 年 6 月 30 日付けで、上告受理申立ては却下され[1]、最高裁が同事件を取り上げて 101 条の特許適格性要件のテストについてレビューしないことが明らかになりました。これにより、最高裁が近い将来に 101 条の特許適格性要件についてレビューする可能性は高くないと予想される状況となっています[2]。
 なお、当事務所の 2022 年 6 月 10 日付 Client Alert「American Axle 事件:特許適格性要件をめぐり米国商務長官が米連邦最高裁に上告受理を推奨」はこちらから参照いただけます。

2.USPTO による意見募集の結果の公表:”Patent eligible subject matter: Public views on thecurrent jurisprudence in the United States”

 他方、米国議会での法改正に関する議論をみても、Thom Tillis 上院議員らが 2019 年に 101条の改正案ドラフトにかかる複数回のヒアリングを実施したものの、現時点で法改正は実現していません。
 そのような状況の中、2022 年 6 月、USPTO は、”Patent eligible subject matter: Public viewson the current jurisprudence in the United States”と題するレポート(以下「本件レポート」といいます。)にて、米国における特許適格性の法ルールに関する意見募集の結果をとりまとめて公表しました[3]。
 この意見募集は、2021 年 3 月に Thom Tillis 上院議員らが USPTO に対して、米国における特許適格性に関する法の現状に関する意見募集を行い、提出される意見を評価し、その結果の詳細な要約を提供することを要請したことを受けて行われたものです[4]。
 本件レポートによると、現行法を支持するか否かについては意見が分かれており、現行法を支持する立場からは、以下のような点が指摘されているとのことです。
 ● 広すぎる特許に基づく濫用的でコストのかかる訴訟を避けることが可能となっている
 ● より多くのイノベーションと知識の共有を促進している
 ● 科学的情報と革新的な医薬へのアクセスを強化している
 特に、AI や量子コンピュータなどの最先端技術の領域からは、最高裁判決以降、投資が増加傾向にあることが指摘されているとのことです。
 他方で、現行法を批判する立場からは、以下のような点が指摘されているとのことです。
 ● 現在の法は特許の取得可能性や、特許権を行使できるかの予測可能性を低減させ
  ており、それによって、新たな技術や特にスタートアップや中小の企業への投資が阻
  害されている
 ● 現行法が、民間のリスク・キャピタルの利用可能性を減らし、それによって、少数の大
  規模な豊富な資金力のある既存の企業にマーケットを集中することによって、イノベ
  ーションを阻害している
 特に診断医療や精密医療の分野における企業のなかには、もはや特許保護を求めず、新しい技術情報の開示を減らす代わりに、営業秘密など、他の方法での知財保護を求めていくことを述べるものもあったとのことです。
 以上のように、現行法を支持するか否かについては、企業によって意見が分かれているものの、特許適格性に関する法律が、明確で、予測可能であり、かつ、一貫性がある方法で適用されるべきであることについては、一般的な合意があることが指摘されました。
USPTO は、本件レポートの公表後も、引き続き、より幅広いステークホルダーへの働きかけを継続し、フィードバックの提出を推奨していくとのことです[5]。

 American Axle 事件の上告受理申立ての却下により、最高裁が近い将来に 101 条の特許適格性要件についてレビューする可能性は高くないと思われ[6]、米国議会における法改正の今後の動向も含め、より長期的なフェーズで米国における議論状況を見守る必要がある状況となっています。

[脚注]

[1] American Axle & Manufacturing Inc. v. Neapco Holdings LLC, SCOTUSblog, available at
https://www.scotusblog.com/case-files/cases/american-axle-manufacturing-inc-v-neapco-holdings-llc/ (last visited on July 22, 2022).

[2] 101 条の特許適格性を申立て理由として最高裁に上告受理申立てが係属しているその他の事例(Worlds Inc.v. Activision Blizzard と Interactive Wearables v. Polar Electro Oy)でも、最高裁は上告受理申立てを却下するであろうとの見解を述べるものとして、
Anthony J. Fuga, Section 101 Roundup: American Axle, USPTO Patent Eligibility Report and What’s Next, Holland & Knight Section 101 Blog, available at https://www.hklaw.com/en/insights/publications/2022/07/section-101-roundup-american-axle-uspto-patent-eligibility-report (last visited on July 22, 2022).

[3] Katherine K. Vidal (Director of USPTO), Report to Congress: Patent eligible subject matter: Public views on the current jurisprudence in the United States, June 2022, available at
https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/USPTO-SubjectMatterEligibility-PublicViews.pdf (last visited on July 22, 2022). See also, USPTO, Following a series of Supreme Court decisions, new USPTO report on patent subject matter eligibility finds diversity of views regarding the current state of jurisprudence in the U.S., June 28, 2022, available at https://www.uspto.gov/about-us/news-updates/following-series-supreme-court-decisions-new-uspto-report-patent-subject# (last visited on July 22, 2022).

[4] Id.

[5] Id.

[6] See, supra note [2].

本稿のPDFはこちらからご参照いただけます。

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