interview

代表弁護士・荒木昭子が語るビジョン

2021年夏、外資系法律事務所から独立し、「日本の企業や人を世界で輝かせる」というビジョンを掲げ、クロスボーダー領域の新しいフルサービス・ファームをつくるべく荒木法律事務所(AIL)を立ち上げた当事務所代表弁護士・荒木昭子。中央経済社編集部石井直人様からインタビューいただき、事務所開設後2年半の奮闘、成果、今後の展望についてお話ししました。

ビジネス法務に掲載された雑誌記事のPDFはこちらから、インタビュー動画はこちらからご参照いただけます。
日本の企業や人を世界で輝かせるための、クロスボーダー領域のフルサービス・ファームをつくりたい
―本日はよろしくお願いします。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

弁護士の荒木昭子と申します。日本の国内事務所でキャリアをスタートし、海外留学を経て外資系事務所に移籍しました。その後、2021年夏に荒木法律事務所(AIL)を立ち上げました。「日本の企業や人を世界で輝かせる」というビジョンを掲げて活動しています。

―「日本の企業や人を世界で輝かせる」というのは魅力的なビジョンですね。

ありがとうございます。当事務所は、グローバル・マーケットで輝く日本のクライアントの皆様のビジネス推進をサポートさせていただくことをビジョンとして掲げています。

当事務所では、アウトバウンドの国際取引・訴訟などグローバル・ファームが手掛けてきた領域にも対応しますが、グローバル・ブランドから独立した国内事務所として、日本のクライアントのビジネスに近い距離に立ち、クライアントと「ワンチーム」でビジネスゴールを実現することを目指しています。

―具体的にはどのような案件を手掛けていますか?

日本企業様を代理して、海外企業との交渉や紛争解決のお手伝いをさせていただいております。現時点では、私自身が知的財産(IP)を専門としていることから、特にクロスボーダーのIP分野では、規模の大小問わず様々な案件のサポートをさせていただいています。

例えば、世界各国をカバーする特許ポートフォリオのライセンス等の取引案件においては、契約書の作成や交渉はもちろん、交渉の過程で紛争が発生する場合、世界の各国の裁判所を使っていかに紛争解決を行うかというスケールが大きな問題が発生することもあります。当事務所では、例えば、このような複数法域にまたがる領域で、クライアントとフラットにディスカッションさせていただきながら、問題解決をサポートしています。また、国内事務所でジェネラリストとして勤務した経験を活かし、IP以外のジェネラルコーポレート案件にも対応しています。

―どのような国の案件を手掛けているのでしょうか。

これまで手掛けた案件としては、米国、ドイツ、中国などに関わる案件が含まれ、案件によって現地のカウンセルと連携して対応しています。個人的には、カリフォルニア州弁護士の資格を保有しており、日本と米国の架け橋になれるような活動は行っていきたいです。

IPが大好きであきらめたくなかった。そして、クロスボーダー領域のIPの専門家が日本のマーケットに必要だと思った
―国内事務所でキャリアをスタートされて、その後外資系事務所に移籍されたということですが、クロスボーダー案件を開拓されることになったきっかけを教えてください。

米国留学前は、国内事務所に所属していました。当時からIP案件も取り扱っていましたが、むしろジェネラリストとして幅広い分野の企業法務案件を手掛けていました。

その後、UC Berkeleyのロースクールへの留学を経て本格的にIPの面白さに目覚め、IPの分野により注力していきたいと考えました。そのような思いを持って留学を終えて日本に帰国したとき、日本では知財訴訟の件数が非常に少なく、この分野の新規開拓は難易度が高いという壁に直面しました。

ですが、私は本当にIPが大好きで、IP分野の弁護士になるという夢をあきらめたくなかったのです。そのようなときに、米国では、IP分野のライセンスなどの取引案件を専門とする弁護士が数多く存在する一方で、日本では、IP分野といえば国内訴訟が主領域であり、IP取引に特化する弁護士は限られているということに気付きました。日本のマーケットでは、そもそもIPの取引はそれほど活発に行われてきませんでしたし、取引が行われる場合でも、伝統的には「調和」「相互信頼」という価値観のもと、そこに弁護士が介入する事例はそれほど多くなかったと思います。

しかし、日本企業を取り巻く環境は、日本のマーケットだけに閉じてはいられない状況に刻々と変化しています。そこでは、日本企業は、海外企業と対等な立場で取引を行っていかなければならず、「調和」「相互信頼」という価値観だけでは問題を解決できないことも多いでしょう。さらに、そのような取引の過程で紛争が発生した場合、海外法域における訴訟に巻き込まれる可能性もあります。

私は、日本の伝統的な価値観を理解しつつ、特にクロスボーダーのIP・テクノロジー取引やそれに伴う海外法域の訴訟等において日本企業をサポートできる人材が必要であるし、この分野こそ、自分はパッションを感じ、開拓していきたいと考えたのです。そこで、留学後しばらくして外資系事務所に移籍させていただき、また、共鳴し合えるクライアント様との出会いもあり、クロスボーダー領域の経験を積みました。

日本のマーケット・文化に真にフィットしたクロスボーダー・ファームを。それを実現するための”ワンチーム”カルチャー
―外資系事務所で研鑽されて、その後、なぜ独立したのですか?

クロスボーダー領域で日本企業のビジネスをサポートできる、日本のマーケットに真にフィットした新しい国内事務所をつくりたいと考えたからです。アウトバウンドのクロスボーダー案件をサポートするにあたって、世界各国にオフィス展開するグローバル・ファームであれば、ワンストップでクライアントをサポートできるという強みがあると思います。

私は、それとは別に、日本企業のグローバルでのビジネス推進をサポートできる、独立した日本の国内事務所がもっと必要なのではないかと考えました。具体的には、独立した国内事務所としての小回りがきく立場で、事案ごとに現地カウンセルとも連携しつつ、日本企業のビジネスと近い距離に立ってアドバイスを提供できる事務所です。

このような事務所は、私自身が取り組むIP領域はもちろん、より幅広い紛争解決全般、国際取引その他の領域でも同じようにマーケットのお役に立てるのではないかと考えました。そこで、クロスボーダー領域全般をカバーするフルサービス・国内ファームとして、AILをマーケットに生み出し、日本企業のグローバルでのビジネスをサポートしたいと考えたのです。

―壮大な計画ですね。どのようにしてこれを実現されようとしているのですか。

私たちのビジョンを実現するため、当事務所の行動指針として、クライアントと「ワンチーム」でビジネスゴールを推進することを掲げています。例えば、クライアントが何か新しいチャレンジをする際、何も経験がないところからスタートしなければならないという状況に直面することがあります。そのような場合、そもそも法的に何がイシューになるのかがわからないこともあるでしょう。当事務所では、そのような整理されていないイシュー、未知のイシューを敬遠するのではなく、クライアントとの密なコミュニケーションをもとに、ビジネスゴールを共有し、そこに至るまでの問題解決に共に取り組んでいきたいと考えています。このようなスタイルこそが、「日本の企業や人を世界で輝かせる」というAILのビジョンを実現するための鍵であると位置付けています。

AILの成長は、チャンスを与えてくださったクライアントとチームのおかげ
―AILは事務所開設3年未満ですが、海外の法律事務所ランキングでも高く評価されているなど、成長著しいですね。成長の秘訣を教えてください。

大変ありがたいことに、AILは、IAMやThe Legal 500など海外メディアのランキングで評価いただきましたが、これは、クライアントの皆様、業界の方々のおかげです。独立直後は、どのように案件を開拓していくか手探りの状態でした。そのようなときに、以前にお仕事をご一緒したことがあった方から連絡をいただき、新しいお仕事のチャンスを与えていただきました。それがきっかけで、様々なお仕事のチャンスに恵まれ、今に至ります。大手事務所から独立して手探りの時期に、一緒に働きたいと言ってくださったクライアントの皆様、支えてくださった皆様に心から感謝しております。そして、もちろんチームの支えも大きかったです。

―一番のご苦労は何でしたか。

事務所の体制の構築が難しかったです。独立してすぐ、ひとりでは行き詰ることに気が付きました。備品の発注や請求書の発行といった事務から、人の採用、チーム作りといったあらゆる経験が初めてであり、全てが手探りでした。そのような経験が、事務所の組織化とオペレーション整備に本腰を入れて取り組むきっかけとなりました。ありがたくも、優秀なスタッフが入所してくれて、事務所のオペレーションが整い、今後のチームの拡張に向け、基礎固めができたと考えています。

AILは、ひとりひとりがプロフェッショナルとして夢を叶え、世の中に貢献するためのプラットフォーム
―現在の事務所の体制を教えてください。

現在、私自身とスタッフ2名の体制まで成長しました。AILに入所してくれた人材は、優秀であるだけではなく、性格も良いのです。AILでは、対外的にも対内的にも互いに与え合うカルチャーを築いており、これを私たちは”Give for Clients, Give for Members”と呼んでいます。この精神がチームで共有され、着実に根付いていると確信しています。

―クライアントに良い仕事を提供するためには強いチームの構築が重要ですね。今後の人材育成の考え方を教えてください。

私たちは、チームの増強こそが、クライアントに対するより良い貢献の源泉であると位置付けており、人材育成を重視しています。日本企業のグローバル活動を法律的な面でサポートできる人材は、日本のマーケットにおいてまだ十分とはいえません。グローバルでチャレンジする意欲ある若手を育成し、グローバル・マーケットで活き活きと活躍できるようなプラットフォームをつくりたいです。

それを通じて、クライアントに心から喜んでいただけるサービスを提供し、日本のビジネス活動のグローバル化を後押しできる事務所に成長したいです。

―どんな人材を育成したいですか?

ものごとを俯瞰的に見ることができる人材を育てたいです。AILでは、クライアントのビジネスゴールの理解とその実行の推進を目指しています。そのためには、職人的にひとつひとつのピースを揃えられるスキルだけではなく、個々のピースを全体の中で位置付けられる能力が必要です。

大きなプロセスの中に駒として組み込まれるような働き方では、そのような能力は身に付けられません。だからこそ、AILでは、若手であっても、「クライアントの真のニーズは何か」「クライアントのビジネスゴールを叶えるための代替案はないか」―そういった問題を一緒に考える機会を積極的に作っていきたいと考えています。また、私自身がIP分野の新規開拓にパッションを持ってチャレンジしてきた経験から、次に続く若手も、臆することなく尖った個性や創造性を活かしてパッションを持てる領域にチャレンジし、夢を叶えてほしいです。

AILは、自らの領域で輝く自律したプロフェッショナルが、チーム内で互いに価値を提供し合って、より大きな価値を生み出せるプラットフォームを目指しています。これが実現できれば、クライアントの皆様に貢献し、マーケット全体にも良いインパクトを与えられる本当に強いチームになると思っています。現在は、これを実現するための事務所の制度的基盤を整えているところです。今後加入してくださるメンバーも含め、チームの皆で、事務所としての在り方を考えていきたいです。

“Give for Clients, Give for Members”の精神でつながるチームの力で、夢に向かって進みたい
―今後3年の目標を教えてください。

私個人としては、引き続き大好きなIP領域で研鑽したいです。事務所としては、今後、さらなるチームの拡張も具体的に予定しており、チーム一丸となって、本日お話したAILのビジョンの実現に向けて具体的な形を描いていきたいです。

そのために私たちが重視しているのが、クライアントとの信頼関係の構築です。AILでは、クライアントのビジネスゴールの理解とその実行の推進を目指しています。その前提として、クライアントが自らのビジネスや直面する課題を開示してくださるためには、長期的な信頼関係がベースとなると考えています。

小さな出発点から、クライアントの皆様と徐々に信頼関係を構築し、より大きなビジネスゴールを共有させていただけるようになる―そういったクライアントとの関係性構築のプロセスを大切にしていきたいです。そのような積み重ねの結果、将来のAILメンバーそれぞれが、「この人だからこそ頼みたい」というところまでクライアントとの信頼関係を高められれば素晴らしいと思います。

―最後に一言どうぞ。

本日語った内容は、我ながら壮大で心が沸き立つ夢だと思います。実現するために、これから長い道のりがあると思います。これを成し遂げるには、”Give for Clients, Give for Members”の精神でつながり、信頼し合うチーム全員の力が必要です。

一緒にこの夢を信じてくださるクライアントの皆様、チームの皆、皆様に後悔をさせないよう、喜んでいただけるよう、至らないこともありますが、これからも精一杯がんばりたいです。

インタビュー:2024年1月

募集要項

当事務所は、私たちのビジョンに共感してくださる仲間のご参加をお待ちしております。